「おはよう。あかり」


びくっと体が飛び上がり、
声がした方を振り向く。


祖母だ。


「今日もご苦労さん。」


「ばあちゃんこそ、どうしたの?
いっつもまだこの時間は寝てるじゃない。」


「いやさ、昨日結構遅い時間に帰って来たろ?

タケルちゃんの所から。
だから、少し話がしたかったのさ。」


「そっか、ごめんね、心配掛けて…」


「いやいや、大丈夫。
…あんた、どうした?
目がボンボンに腫れてるよ?」


あかりはハッと、目にタオルを当てつつ


「ううん、大丈夫」

と答える。


それと同時に、じわり、また泣きそうになる。



祖母は不審な顔で


「あんた、もしかして…」


あかりはドキッとする。


「……蚊にさされたのか?」



少し身構えてた自分が、ガクッとなる。

しかし
「あー、そう。すごい痒くて…」


と、誤魔化す。

あかりの嘘に
祖母は

「痛々しいっ!!
目にキンカン塗っておくかっ!?」

と言う。

あかりは
(なんだ?ばあちゃんは天然なのか…?キンカンなんか塗ったら死ぬでしょ、普通)


と誤魔化した事に苦笑いをしながら

「イヤイヤ、大丈夫だよ」


祖母は

…そうかい?


と言いながら、


「ご飯、食ってくか?」


と言う。


「いやいや、大丈夫。
もう時間だし、行くよ」


「いつもの時間に帰ってくるだろ?」

「うん。」


そう答え、裏口で作業着に着替える。


着替えるのをじっと見ていた祖母に向かい


「んじゃばあちゃん、行ってくるよ。」


そう言った瞬間。


「…ホントはタケルちゃんとなんかあったんだろ?」



と祖母がぼそっと言った。