ガバッと、ベッドから飛び上がる。

「…夢か…」

あかりはそうつぶやいた。



薄暗い朝。

午前3時。

熱帯夜だったらしい。
サラサラとした汗が体に纏わり付く。

7月末の早朝の家の外には

もうはや、

ジリリリリリ…と
虫の声が聞こえる。


あかりは、吹き出した汗をシャワーで流し、牛舎に行く為に支度をする。


Tシャツにジャージ。

これが朝のスタイル。


パシャッ


冷たい水を顔にかけ、ジッと洗面台の鏡で自分の顔を観察する。


(…腫れぼったい目……)


昨日、あれから、ようやく家に着き、もう寝静まっていた家の暗闇の中、そそくさと自分の部屋に戻っていた。


ベッドの中でずっと泣きっぱなし。


(あー…いつ寝たか覚えてないや……)



いつの間にか泣き疲れて眠っていたらしい。


あかりは昨日、タケルに言われた言葉を思い出す。


『あかりが好きだっ!!
誰が何と言おうとも』



ひたすら後悔がよぎる。


何故素直になれなかったのか。


じわりじわり


また、鏡の前の自分は目に涙を溜めている。


(…どうしよ…)

タケルに会いたくない。


『素直にならなきゃね』


ハッ

夢で誰かに言われた言葉を思い出す。



何故か夢だと感じなかった。



(夢の人はずっと私に語りかけてくれたみたいだった…)


誰だかわかんない。


けど


(わかんない…)


そう思い、俯いた時。


声を掛けられた。