<あかり視点>

パタパタパタパタ…
街灯も何もない道路をひたすら走る。

「グスッグスッ」


(やばい…どうしよ……)


これで2回目だ。
タケルのひたむきな目をそらし、こうやって来てしまったのは…。


最初は本当にウザいヤツだと思ってた。

子どもの事や、自分のやってしまった事。

それを考えると、心を閉じて

「死にたい…」


村に来ても、そればかりを考えてたのに。


『お前朝4時に家の牛舎来いやっ!!』

少し苛立ったタケルの顔や


『お前…もう、体大丈夫なのか…?』

そう言ったタケルの眉をへにした顔。


『お前が思い出して、辛いと思ってる時は必ず行くから…』


そうやって、抱きしめてくれたぬくもり。

あかりは、後ろから抱きしめ、泣いてくれた日、思い出して、タケルに心を開いて。

タケルは絶対的な存在になっていたと気付いたのだ。

気付いたけど、やっぱり自分が幸せになって良いのか?
自信が無かった。

前回と同じく、へたり込みながら

(ズカズカ、心に入り込みやがって…)


そう思う。


『俺の事、男だと思ってくれないなら引いてやる』

だの

『誰が何と言っても好きだ!!』

だの。

ホント心に入って来過ぎだ!!

(どうしてくれる…)

嗚咽が止まらない。


そんな気持ちが嬉しかった。

受け止めたかった。


「私も好き」って。

(なんで!?なんで素直に受け止められなかったのっ!?)


そう思い、嗚咽を零す。


こんなにも好きだ…そう思ったのに気がついたのに。


(私はいつから、臆病者になったんだろう……?)



あかりは、もう何もない下腹部に手を当て。


(……教えて?)

と、問う。


どうしたら素直になれるか、分からない。


(なんで…?

なんで…?)


涙でぐちゃぐちゃになりながら、あかりは泣いていた。


たった一言。

「あなたと一緒にいたい。」


そう言えない自分に怒りを感じながら…。