タケルの傍に走り寄ったあかりは青ざめながら

「ど、どーしちゃったのよ、コレ…」

と声を掛けた。


タケルは嬉しそうに

「あかりぃぃ〜!!よくぞ来てくれたっ!!
助けてくれ〜!!!」


ガシっと両肩を揺すぶる。


「わかっ分かった…、で、どうしたら良いの?」


両肩を掴んだタケルの手を軽くどかしつつ、タケルにそう問う。

そこで落ち着いたタケルは

「取り敢えず、捕まえた牛達を牛舎に誘導してリード繋いでくれないか?」

と聞く。


「分かった。で、タケルは?」


「俺は引き続き掴まえっから!!」

「了解。」


そう言い、知らない男から手渡された牛のリードを掴んだ。


「キミ、あかりちゃん?」

知らない男がそうあかりに声を掛ける。

「そ…そうだけど、あなたは?」


「俺は川田シン。タケルの同級生なんだ。よろしくな。」

と、握手を求めて来る。


牛の力強い動きに、リードを両手でしか持てないあかりは

「ま、またあとでね。」と言う。

そのまま、牛のリードを引っ張り、牛舎に連れていこうとしたあかりにシンは


「あかりちゃん!!タケル、キミの事大切に思ってるんだ。
だから、大切にしてやってくれよ?」


と声を掛けた。


あかりは赤面し、リードを掴んでいる手を緩めそうになったが、ハシッと掴み


「う…うん」

とシンに言った。


にぃっと笑ったシンはまた、疾走している牛に駆け寄り、行ったり来たりし始めた。


あかりは赤面し、ぼぉっとしてたが


ンモォッとあかりに向かい鳴いている牛に

「分かってるよ。落ち着こうね。」

と声を掛け、牛の定位置まで牛を誘導し、リードを付けた。


(大切に思ってる…か…)

ふぅっとため息をつくあかりに共鳴するように、ペロリとあかりの手を舐めたリードを付けた牛。


「あんたなら…どうする?」


牛は「知らないわよ」と言うように、細い尾をピシピシ尻に叩きはじめた。