(あかり視点)


あかりは青ざめていた。

「ちょっと!!私の家来てくれるっ?!」

恐らく小さい頃に会ったひとみと思われる女性に手を引っ張られ、無理矢理作業着を着せられ、タケルの牛舎に着たものの。


ドタドタドタドタ…ととてつもない速さで疾走する牛に

「おーい、タケル〜捕まえたぞ〜」
という、知らない同じ歳位の男に

「分かった〜、牛舎で落ち着かせてくれ〜」

と言ったタケル。


そして

「ゼハーゼハー」と青ざめた顔で息切れをしながら、外を疾走しまくっている仔牛を先周りしようとしているヒサシ。


「ヒサシ!!これじゃ捕まえられないから俺あっちに先回りするわっ!!」

と言うタケルの父。


着た直後に結構大変な状況の時に来てしまったかもしれない、と、予測したあかりは、漫画だったら、額から縦線が三つ出て来そうな位げんなりした。


それでも気を取り直し、
「ひ…ひとみさん、事務所に戻って下さいっ」
と、近くにいたひとみに声を掛け、


タケルを見る。

『心配してるから…聞いてんだぞ…』


ふと、3日前を思い出したが。

(いや、こんな事言ってる暇はないっ)


そう思い。


「タ…タケルッ!!」


と声を掛け、タケルに走り寄った。