そんな時

牛舎の玄関口から足音が聞こえた。


「タケル?なんか、牛舎の前にひとみの車みたいなのあるみたいだけど…」

ヒサシだ。


「……!!!!」

タケルはあわわ…となった。

「シ…シン!!ひとみを止めといてくれ!!」

そう言った直後。


「ヒ〜サ〜シ〜〜??」


メビウスの頭の蛇の様な物がひとみの頭から出て来た様な幻覚をタケルとシンは見たような気がした。


「あ、あら…?ひとみちゃんやっぱりきちゃってたのね…?」


ヒサシはそのおどろおどろしい雰囲気のひとみに呆気に取られた顔をし、後すざる。


「そーよー来ちゃってたわよぉぉ〜。
10個も下の私をモテ遊びあんな事もこんな事もして、揚句に付き合ってるつもりは無いとか言って、14歳のあたしを捨てた悪い男っ!!!」


「や、だからそんなつもりじゃなかったって言ってるべや〜!!」

がくりとへたり込む様に言う。


ヒサシににじり寄るひとみは

「うるさいわね〜!!それでも私の純情を踏みにじったのはあんたなの〜!!」


「タ…タケル…ホントにヒサシさんあんな事やこんな事しちまったのか…?」

「さ…最後まで行ってないらしいけどな…」


「あ…そりゃヒサシさんに否があるわ…」

「ハハハ…まぁモテ遊んだって思われても当然だな」


ひとみが牛舎の外までにじり寄って行き、ヒサシは後ずさる。

そんな光景をタケルは見てた時、ハッとした。


(そ…そういや、寝床の蕨の出入りすんのに、柵の鍵開けて…)


そう思ったが…。


ドン…ッ。

ヒサシは牛のお尻に衝突してた。


「「……あ゙…………」」

シンとタケルは同時に声を出し、顔を見合わせた。