そんなやり取りをしているうちに雪お兄ちゃんも到着。

「…。」

がばっ!ぎゅ~~~っ。

「雪お兄ちゃん!?
どうしたの、いきなり無言で抱きしめないで~っ!」

車から下りてきたかと思えば突然抱きしめてきた雪お兄ちゃん。
恥ずかしいやら暑いやらでプチパニックになりながらも、やっぱり好きな人に抱きしめられるのは少し嬉しい。

「よかった。」

「?」

「もう前髪とかで顔隠してないと外に出られなくなってると思ってた。
しかも今は昼間だし、待ち合わせもこんな場所にしちゃったから店の裏で待ってろって言おうにも琥珀も聖歌も連絡とれないからどうしようって。」

二人とも連絡取れなかったのは私が寝坊したからだ。
どうやら相当心配をかけてしまったらしい。

「心配かけちゃってごめんなさい。」

「気にするな。
俺が勝手にしていただけだから。
その髪形とても似合ってるよ。
今日も俺の聖歌は世界一可愛い。」

「雪お兄ちゃんてば、お世辞上手なんだから~。」


「なあ、琥珀君。
聖歌と雪夜さんっていつもあんな感じなの?」

「ええ、一年中あんな感じです。」

「俺の前だからってわけじゃなかったんだ。」

「あの人達の目には今、お互いの姿しか映ってないんだと思います。
幸せそうなのは結構なんですけど少しは周りを気にして欲しいんですよね。」

「俺的にはあんまり幸せそうにされるのも…。」

「じゃあ、あのキラキラ別世界の中入ります?
すぐに追い出されますけど。」

「そうなんだよね。」


「「はぁ~。」」


遠くから二人の盛大な溜め息が聞こえて現実に引き戻された。

「通行人の視線が痛いです。雪お兄ちゃん。
そろそろ出発しない?」

「(…ちっ、邪魔が入ったか。)
そうだな。
そろそろ行こうか。」

「うん!」

「それじゃあ聖歌は助手席乗って待ってて。
琥珀と椋兎は荷物積むの手伝え。」

「了解。」

「姉ちゃん荷物かして。一緒に積むから」

「ありがとう。」


少し遅れたもののなんとか出発。

車中和気あいあいとしながら別荘に向かった。