私にとっては目隠し以外にもいろいろと 思い入れがあった髪の毛。
それを勝手に切ったのだから一発殴って女装させて買い物に付き合わせるくらいで済むなら安いものだと思う。

「はぁ~。」

「いい加減観念して買い物行こうよ~。」

「あぁ。行くさ。行かせていただきますよ、お姉様。
くそ~。」

まだほろほろ泣きながらも出かける準備をする琥珀。

口を開かなければはかなげな女の子にも見える。

玄関にある大きな姿見に写る私達は双子そのものだった。

「妹か~。」

「なにうっとりしてるんだよ!
俺、弟!
男!!」

「わかってるって~。
…でも憧れる。」

小さい頃から妹に憧れはあったものの可愛い弟がいたのでそこそこ満足していた。

でも、こう形になって再現されるとやっぱり良いな~と思ってしまう。

「女の子って飾りがいがあるよね。」

「頼むからその思考を自分に向けてくれ…。
姉ちゃんも女だろ。」

「自分を飾るのとはちょっと違うんだよね。」

「もう絶対女装はしない。
今日だけだからな!」

ぶつぶつ文句を言いながらも、ボロボロ泣きながらも、私のわがままを聞いてくれる琥珀。

これ以上いじめたらさすがに可哀相だし嫌われてしまう。

「大丈夫。わかってる。
今日だけ付き合って。
昼間の外出と買い物は久しぶりだから。」

不安なの。

「わかってるよ。
そうでなければこんな格好してまで出かけない。
髪の毛切ったお詫びも兼ねて特別。」

こんなふうにいつもさりげなく守りつつ、なかなか前に進めない私の背中を押してくれる。

神様、琥珀を私の兄弟にしてくれてありがとうございます。

琥珀は私にとって掛け替えのない大切な家族で、本当は男だろうが女だろうが関係ない。

いつまでも私達を仲良しでいさせて下さい。

祈りを込めて隣をトボトボ歩く琥珀の手をそっと握る。

少し驚き恥ずかしそうに俯きながらも振り払おうとはしないで、緩く握り返してくれる私の弟はやっぱり優しい。

「いつもありがとう、琥珀。」

「うん。」

私達は手を繋いだままショッピングモールに向かい、水着の他にもいろいろと見て回り買い物を楽しんだ。