「なら、良かった。」

「え?」

「俺はお前を他の奴に
渡すなんて嫌なんだよ。」

ん?え?ちょ!


「どういう意味?」


下川はなにも言わない。

信号で車が止まる。


「……好きなんだよ。」

「え?」


不意のキス。

その後、車は発進した。


「下川……。」


「……。」


「ちょっと!無視しないで。
なに考えてんの?」

「そのまんま。」

は?

「意味わかんないし。
なに?彼女いるじゃん!
私、生徒なんだよ!?」

車が学校に入っていく。

「そうだな。でも、俺は
もういいんだよ。」

「なにが?」

「彼女とは別れるし、
この学校ともおさらばだ。」

車が駐車場に止まる。

「なんで?なんで学校から
いなくなるの?」

「北海道に転勤。」

「なにそれ……。」

「2学期から北海道の学校で
働くんだ。」

急過ぎない?

「なんで?」

「実家に帰るだけ。
母さんが体調崩して
大変そうなんだよ。」

でも……やだよ。


「下川の代わりになる
先生なんかいないよ!」