麗香は眼の前にいる男に気付かれ無いように、溜め息をついた。

何故男という生き物は、自分の事しか考えないのだろう。

今まで出会った、そんな男たちを思い出すと、麗香の心はより冷えてゆく。

今宵の男はどうだろう。
凍りついた私の身も心も、少しは温かさを得られるのだろうか…

麗香は新しい男と出会うたびに、甘い期待を抱く。

そんな期待は、すぐに打ち砕かれるに決まっているのに。


今宵の相手は、平凡なサラリーマンの様だ。

一緒に食事をしていても、自慢話と愚痴しか言わない。

もっと気の利いた話題があるだろう。

愚痴を言う奴の自慢話ほど、情けないモノはない。

無理しなくても良いのに…

ウンザリしてきた。

こんな男とは、ここまでだ。

私はそんなに易い女ではない。

私は席を立った。

「じゃあね」

男の顔が面白い。

呆気にとられている。

構わず店を出て歩き始めた。