カンジのからだは力を失い、海中を漂っていた。
その気を失ったカンジのからだを麗香が支えた。

そしてカンジの口に自らの口を当てがい、息を吹き込んだ。

カンジは咳き込みながらも、麗香の息を吸い込んだ。
薄れていた気がはっきりしたようだが、からだの自由はきかない。

麗香はカンジのからだに少し力が戻った事を確信すると、海面までカンジを連れて上がった。

海面に顔を出したカンジは、大きく咳き込むと、肺に入った海水を吐き出した。
充分で無いにしろ、少しだけ呼吸が楽になった。

麗香はカンジを抱くようにして、浜に向かって泳ぎ始めた。

二人は底に足がつくと、ゆっくりと浜に向かって歩いた。

「大丈夫ですか」

途中で麗香が声をかけた。

「ありがとう。何とか大丈夫…」

足取りがふらつきながなも、笑顔を無理につくったカンジが答えた。

砂浜までたどり着くと、カンジは倒れこんだ。

その脇で麗香がたたずんでいた。

朝日が昇り、麗香の濡れたからだが、キラキラ輝いている。