麗香はベッドの中で目覚めた。横には見知らぬ男が、まだ寝息をたてている。

何度となく、繰り返してきた、朝の光景…

何の感情も沸き上がらない。

沸き上がらないというより、感情そのものを切り捨てているのかも知れない。

麗香を知るある男は『氷を抱いているようだ』と、周囲に洩らしたことがあった。

心を固く閉ざし、深く沈んだ沼の中から、時折見せる冷たい眼の光に、男たちの心は凍てついてしまう。

麗香はソッと起き上がり、男を起こさぬようにベッドを出た。

「この男も駄目…」
ポツリと呟く。

シャワーを浴びる

昨夜の名残を洗い流す。
それも熱いシャワーで。
麗香にとっては、1つの儀式である。

もう二度と会うこともない男の匂いをすべて流すのだ。

そして、また今日も日常の朝が始まる。