「お前さあ、仮にも『香澄』自身の名前が載っている以上そういう事は軽々しく言うもんじゃないぞ!」                      
「そりゃそうだけど…葵の右目の事もあるし…」              
香澄は葵の目の秘密を知っている数少ない友人の一人だった。                    
「…それは俺も最初考えたさ。でも、そうなると今頃になって何故?」                
「私、今、思ったんだけどこの一番最初の『葵』と葵が何か関係があるのよ…ただその理由は分からないけど…」                     
「俺もそう思うよ。でも、他の4つの家は?」               
「初代の『葵』のところで何か関係があったとしか考えられないわね!」               
「じゃ、『2015年』になって表れた訳は?」            


「復讐!?だったりして…」

「またかよ!!俺が香澄を殺すか、その逆に香澄が俺を殺すの?」            
「別に殺さなくても…」             
「殺さないまでも何か理由があるだろう?」                
「う〜ん、その理由を探るには江戸時代に戻らないと、って言っても無理だしね!?あるいは代々語り継がれてきたとか!」            

「ん!?」                   
葵がフリーズする。               
「どうしたの?」                
「そうだ、きっとそうだ!」            
「だから、何よ?」               
「語り部だよ…」                
「語り部!?」                 
「長谷部さんの存在だよ…長谷部家はその理由を代々語り継ぐ家だったんだけど、俺に接する事でその役目を終えた。だから、息子に引き継がせる必要はなかったんだ」                      
「何か聞いたの?」               
葵は諳じていた徳蔵の文章を余白の部分に書いて香澄に見せる。