「冗談よ!真顔になっちゃって可愛いんだから…」             
「お前なあ…」                  
内心は『ホッ』としたものの自分の動揺に男と女の立場の違いを実感した。                          
各々、ソフトドリンクを注文し、昔話に花を咲かせる。                       
「……そうそう、あれは笑ったわねぇ…ところで、葵は大学、どこ受けるの?」            
「まだはっきりと決めてないんだ。香澄は?」               
「私はK大が第一志望。ただ、両親は留学させたがっているみたい…」                  
「K大か!?香澄なら大丈夫だろう!今の俺じゃとてもとても…」

「葵だってやれば出来るはずよ。中学時代は私より成績良かったんだから…」             
「中学時代は…ね」               
「私はてっきり私立の進学校に行くとばかり思っていたのに。どうしたの?」             


「…先が見えなかった…」             
「えっ、どういう意味?普通は逆じゃない!?」              
「一流大学に入って一流の会社に就職して一流の嫁さん貰って一流の子供を作る…じゃあ、その先は?」               

「…幸せな老後…」

「俺達に見える物はそんな程度だろう。香澄の結論から言うと最終目標は『幸せな老後』になるけど、そうなら、そこに至るには必ず進学校に行く必要はないはずだよ」                  
「まあそうなるけど…」             
「『漠然とした未来』を追い掛けるよりも毎日楽しく過ごした方が良いかなあと思ってさ…」

「何、それ!?」                
「簡単に言うとやりたい物が見つからなくて勉強するのが嫌になったって事!」            
「ふ〜ん。よく分かんないけど……葵には葵の生き方があるしね。ところで、持って来たの?」