「何で御座る!?」               
「今すぐ結婚っていうわけには…」                    
「あははははっ、それは承知!食べていけませぬ故…」

「その通りで…」                
「そうではなくて葵殿の気持ちを確かめただけで…」            
「そうでしたか!?」              
「この事を雪之に…!?」            
「はい、お願いします」             
「あいつも苦労ばかりだからこの事を知ったらどんなに喜ぶか…グッグ…」               
「山中殿、お子達の前で涙は禁物です!不安がります故!」

「これは面目ない!だが、近い将来、必ずや親戚付き合いを…」

「こちらこそお願いいたします」                     
山中の差し出した右手を葵は両手で『ガッチリ』握り締めた。                                                                                                      
綾野と供に山中達を家まで送り届けた帰り道、葵は綾野に雪之との結婚の話を告げる。                     
「本当ですか、兄上!?」            
「うん」                    
「それはおめでとうございます」

「…とは言ってもすぐではないぞ」

「それでも雪乃様が私の義姉様になるというのは嬉しい限りです」

「そうか、そう言ってくれるか、ありがとう」                           
有頂天の葵はここである事に『ハタ』と気付く。こちらの生活に慣れる事に一生懸命で考える事が今まで一度もなかった。                       
(俺はこっちの世界で生きているけど、向こうの世界の俺はどうなっているんだ!?)