巻き物が床に転がっている。                       
香澄の長い黒髪の薫りが大脳を刺激する。                 
「重い……」                  
「あっ、ごめん…怪我ないよね!?」                   
「大丈夫だ…と思う」              
倒れた拍子に腰を少し打っているが、そこは騎士道精神を発揮して…                             
「何なの、これ?」               
もう巻き物を手に取って見ている。                      
(おいおい、普通はここからラブロマンスに展開するんじゃ…        
見つめ合う二人⇒実は、俺…⇒実は、私も…⇒抱き合う二人⇒交わすキス⇒一夜の契り⇒愛でたく結婚…
というのは飛躍し過ぎだとしても…)                 

「これ、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、お父さん、お母さんに、私の名前まで載っているじゃない!!どういう事よ!?」                    
「そんなに大声出すなよ!母さんに聞こえたらまずいだろ!」

「だったら説明しなさいよ!」

「分かった、けど、ここじゃダメだ!」

「どうして?」                 
「その答えは間もなく分かる。その前に巻き物を返せ!」

「返すけど絶対話すって約束ね!」                    
「うん、約束する。だから…」                      
香澄から巻き物を返してもらって、破れ等を点検しながら丸め込んでいると
『ドカドカ…!』
と足音が聞こえて来る。                                                 
ドアが開く。      

「香澄ちゃ〜ん!」                
「あらっ、美優ちゃん。久しぶりね…」                   
『成る程』という顔をして葵を見る。