「兄上の場合は藩のお取り潰しで…」
(お取り潰しとは何だ?)
「そうでしたか?」
「兄上は勘定方の役人でしたが、地元に残っていても食べていけないので江戸に職を求めて…」
(成る程、簡単に言えば勤めていた会社が倒産したという事か!?)
「あの〜っ、私にも『綾野』という妹がおりますので宜しければ懇意にして頂けないかと!?」
「えっ、本当ですか?それは是非とも…」
「今度連れて参ります」
「今、戻ったぞ…おっ、美男美女で中々お似合いではないか!?」
「兄上ったら、いい加減怒りますよ!!」
「すまんすまん。葵殿、一杯だけ付き合ってくだされ!?」
「はあ…」
葵は勿論未成年だったので酒を飲んだ事はなかったが、こちらの世界に来てからは舐める程度には飲んでいた。
少し酔ったのか、顔が熱いが、夜風は非常に気持ちが良かった。
(雪之さんは美人だし性格も良いし…あんな人が恋人だったらなあ!?
って、俺がこっちの世界で子供を作ったらどうなるんだ?……俺の血が脈々と受け継がれていくわけか!?
う〜ん、それも良いか!?こうなったら成るようにしかならないだろうし…)
葵は、自分の行く末に一抹の不安を感じながらも、雪之の事を想うと足取りは軽くなった。