女中に案内されて二階の角部屋に通される。                
「失礼いたします。お連れ様をお連れしました」                          
女中が開けた障子の向こうには懐かしい『茂助』の顔が…                      
「茂助殿!!」                 
「おーっ、これは紫馬様!」                       
葵は駆け寄って茂助の手をしっかりと握り締める。             
茂助の側で座っていた勘吉が『ポカン』とした顔で葵を眺めていた。                      
「勘吉、元気だったか!?」           
「へへへっ、元気でしたよ!」                                 
旅用具を部屋の端に寄せ、二人、部屋の真ん中に座り込む。                     
「一体、何があったんですか?」

「私も詳しくは分かりませんが、紫馬様は信頼できる御方とお見受けし、私の知っている事をお話します」                      
「お願いします」                
「その前にひとっ風呂浴びて来ませんか?私どもも先程着いたばかりで…」               
「そうですね。では、私が荷物の番をしてますからまず勘吉と一緒に…」                     
「そうですかあ。では遠慮なく…勘吉、行くぞ!」             
茂助と勘吉が出て行った後に葵は自分の荷物を解き、風呂に入る準備をし、二人の帰りを待つことにした。                                                                                    



入浴と夕食を済ませ、勘吉を寝かし付けた後に茂助は葵に事の真相を話し始めた。