午前中晴れていた空は午後には曇り出していた。        


「何か収穫はあったの?」            
「これといって別に…ただ…」

「ただ…何?」                 
「最後のところが引っ掛かるんだよ!」                  
「お金を埋めたところね!?」

「うん」                    
「ただの伝承に過ぎないと思うけどな!?」                  
「でも、何故か気になる…」                       
(残された『鍵』は『山中家』になってしまった。どこにいるんだ、山中さん!?)                                              


「ねぇ、葵、これからの予定は?」                    
「別に何もないけど…」             
(はいはい、分かりました。誰かと約束があるのね、あなたは!どうぞ俺の事はお構いなく…)                             

「デートしよっか!?」             
「えっ!?」                  
振り向いて笑う香澄の顔が眩しかった。               
「折角ここまで来たんだし、四月からはお互い忙しくなるじゃない!?だから…ねっ!それとも、私じゃ不満!?」                    
「いやそんな事は…」              
「じゃ、決まりね。さあ、行くぞ〜っ!」                 
「行くってどこへ?」              
「海に決まってるじゃない!」

「海〜〜〜っっ、この時期に!?」              

「この時期だから良いんじゃない!!」

急に腕を引っ張られ倒れそうになる。

「バカ、危ないだろう!手を離せ、手を…」

だが心は弾んでいる。香澄の手の温もりは生涯忘れる事は無い暖かさであった。