「どうぞお入り下さい」             
ドアを開けてくれたのは家政婦さんのようだった。             
「そこの上で泥を落としていただければそのままで結構です!」

(アメリカみたいだな!?)

香澄は葵の耳打ちに『クスッ』と笑う。                             

部屋に入って更に驚いた。            
広い、とにかく広い!葵の家のリビングの5倍はあろうか!?                    
もっと驚いたのは東京湾が眺望できるガラスが『一枚張り』の硬化ガラスであったことであった。                              
(すんげぇ〜〜〜っ!!)            
さすがの香澄もこれには少し驚いたようだ。                            


「いらっしゃい…」               
中央ほどにある大きなビロード張りのソファーから白のスーツ姿のテレビで見たことのある女性が立ち上がる。                       
「初めまして。紫馬葵といいます」                   
「初めまして。土門香澄です」

「隆道の妻の『佳奈』です…あなたが土門さんのお嬢さんね!?」

「父がいつもお世話になっています」                  
「いえいえ、こちらこそ。で、こちらの方は?」             
「私の幼なじみです」             
「どうぞよろしくお願いいたします」

「あ〜っ、あなたね、隆道の先祖について聞きたいという人は?」

「はい」                   
「どうぞお座りになって…」                       
そう言ってからキッチンの方に歩いて行った。