『巻き物』を見つける。             
(そういえば、最近、全然見てなかったなあ…)              
当分は見る事もないだろうと段ボール箱の隅の方に丁寧に入れる。                               

携帯が鳴る。              
(…どこだ!?…あれっ、ないぞ。音はすれども姿は見えず、と。……あった、あった!)                         
香澄からだった。             
「もしもし…」                 
『葵、久しぶり』                
「久しぶり…」                  
『合格おめでとう!』              
「ありがとう。香澄こそ、おめでとう!」                 
『ありがとう。もっと早く電話しようと思ったんだけど、色々と忙しくて…』                       
「俺もそうだろうと思って電話しなかったんだ」              
『うん、昨日までイタリアに行ってたの…それはどうでも良いんだけど、凄い事が分かったんだ!』               
「何?」                    
『私のお父さんと菱山隆道って知り合いだったの!』

「えっ、マジで!?」              
『うん。実は、今日知ったんだけどね!』                 
「どういう事?」                
『合格祝いが色々な所から届いてて今日整理してたら、その中にあったのよ、菱山隆道の名前が…』             
「……」                    
『それでさっきお父さんに聞いたら仕事の関係で昔からの知り合いだったんだって…ほら、菱山隆道って菱山建設の代表取締役で、私の家も建設業やっているから…』            
「……」                    
『ちょっと葵、聞いている?』