「お兄ちゃん、今日のデートどうだった?」                
「お前はもうノックを忘れてる!!」                   
「えへへへっ…で?」              
「うん、それなりに楽しかったよ」                    
「美紗ちゃん、って可愛いいでしょう!?」

「可愛いけど考え方がしっかりしてるよ。お前とはそこが違う!」

「付き合うの?」                
「まだそんな次元の話じゃないよ」                    
「恋は焦らずにだね!?」            
「まあ、そういう事!」            
「あっ、そうだ。ご飯だって!」               
「今、行くよ」                 

部屋は段ボール箱の山で足の踏み場もない。大学生の生活に備えて不要な物を整理しているところだった。                                                                                                         





「御馳走様!」                 
「葵!」        

今日も父親の姿は食卓にはなかった。            

「うん?」                    
「入学式に着ていくスーツどうするの?」                 
「どうするの、って?」             
「オーダーメイドにするのか、デパートで買うのかって事!」

「どっちでも良いよ」              
「そうね、入学式まであと2週間だから、今回はデパートで良いかしら?」              
「うん」                
「じゃあ、明後日、お祖父ちゃん達が出て来るから、その日に買いに行きましょう!?」                    
「分かった」