〔2〕

「葵先輩は高い所は苦手ですか?」                    
「苦手ではないけど、そんなに好きでもないよ」                          
本命の大学に合格した葵は四月から埼玉の大学に通う事になった。今日は、近藤美紗と近くの遊園地に来ていた。                 
「美紗ちゃんは遊園地とかよく来るの?」                
「はい、結構好きでよく行きます」                   
「観覧車とかも乗るんだ?」

「はい。退屈ですか?」            
「はははっ、退屈じゃないけど、遊園地は殆ど来ないから勝手が分からないだけ…」                     
「あの〜っ…」                
「何?」                    
「埼玉の大学には自宅から通うんですか?」                
「うん。片道1時間半程掛かるけどね!?」                
「良かったあ…向こうに下宿されたら中々会えなくなるから…」

「はははっ、そんな事で悩んでたの!?」                  
「ご迷惑ですか?」               
「そうじゃなくて、何で俺かなって!?」                 
「好きになるのに理由はいらないと思います!」              
(おう!!このパワーには圧倒されそうだ…)                    

観覧車の旅の終わりを告げるかのように、係員がドアを開ける。                               
葵は美紗の手を取って外に出す。

「気を付けて…」                
降りたのを確認して手を離そうとするが、美紗が手を離そうとしない。