間も無く夜が訪れる。

そうすれば松明に照らし出される場所以外は、見えなくなる。


「陛下、どうします」

「・・・・松明を用意しろ。一小隊を連れてその娘の所へ行く」

「それはまずいんじゃないですか」

「何故だ?」


この暗闇だ。

敵国も右往左往しているだろう。


「それから軍を叩き起せ――どうせ起きてるだろうが」

「少々前進しときますか?」

「・・・そうだな」


これはおそらく、鳴神が我らに与えた最後の機会だ。

逃すわけには行かない。


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(馬! 馬だあ!)

バスタブの淵にぎゅっと摑まり、駆けてくる足音をただ待っていた。

今でたって全裸だ。逃げ道はない。


(どうしよう。このまま、殺されちゃうのかな・・・)


夜なのにはっきり見えるその姿に、ただ怯えていた。


「そ、それ以上こっちこないで!」


怖さのあまり叫んだが、意外にも効果があった。

馬に乗った軍団は、10メートルくらいの距離を開けて止まった。