空が鳴る。
これは鳴る神の怒りである。

空に光る龍がはしる。
これは鳴る神の訪れである。


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「陛下、歩兵、弓隊、騎馬隊揃いましてございます」

「敵陣はどうだ」

「はっ、こちらと同様、準備は整ったようでございます」

「・・・」


陛下と呼ばれた男は腕を組み、天幕の中で思案していた。

どうすれば、無敗で知られる敵国の軍を打破できるだろうかと。

相手方の将兵合わせて2万に対し、こちらはたったの1万。

これだけで我が軍の負けは見えていると言うのに。

しかし一軍を預かる者として、顔に出す訳にはいかない。

指揮官の不安はそのまま下層の兵までにも伝染するからだ。


ひとつ期があるとすれば、これから訪れる闇夜だ。

闇夜に乗じて何か敵軍に仕掛けられれば、勝機はあるかもしれない。

この考えは騎士道に反する。しかしだ。

王としても、この軍の指揮官としても、一万の兵を負け戦に駆り出す訳にはいかないのだ。


男は天幕から歩み出て、小高い丘の傾斜に配置した軍を見た。

それから空を見上げた。

逃げることはできない。

罪も無い民草を、あの非道な国にむざむざ奪われてなるものか。


「神よ・・・・いるならば、教えてくれ」


この一万の兵と、国と、そこに暮らす人々を守る術を。