多田とうまく喋れなくなったのは、あの忌々しい着信音事件の事もあるが、多田が同じ剣道部の井岡はるか先輩と付き合い始めたからである。
どっちも大好きな先輩で、
どっちも憧れの先輩で 。
でもやっぱり自分をうまくごまかせなくて。
二人にたいして勝手にギクシャクして、
そんな自分が更に情けなくて…
それでも二人はいつもと変わらず優しくて、そんな日々の中、ひなはゆっくりゆっくり、恋心をただの尊敬や憧れにかえていくことが出来た。
しかし…竹刀を多田に渡したのは失敗だったかもしれない、とひなは頭を抱える。
だってめちゃくちゃ格好いい。
いかんいかん、落ち着け私…っ、と自分をなだめて、
また憧れの君の後ろ姿を切なく見つめた。
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「で?どうなの?」
「は?」
隣の席に堂々と座る忌々しい優男に、ひなはちらりと視線だけ送る。