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「アホ渡辺!!」


ばこーぉぉんっ!!!



「アホ渡辺!!!」



バシィィイィン!!!



「アホ渡辺ぇぇ!!!」


ばしこぉぉぉっんっ!!



部活動後の静まり返った道場で、ひなの声と荒々しい竹刀の音が響き渡る。

キツく縛った長い髪が美しく揺れ、太刀筋も少々荒いが実に洗礼されている。

声さえ聞こえてなければその光景は絵になるほどだ。


練習用の防具人形にひたすら打ち込む後ろ姿を見ながら、多田は笑い声を抑えるのに必死だった。




「めちゃめちゃ邪念こもってるね、ひなちゃん」



「せ、先輩?!」



ひなは甘い響きの声にバッと振り返る。


「いつも残って練習、お疲れ様。」


そこにはキリッとした中に爽やかな笑顔を混ぜ込んだ、憧れの先輩が立っていた。