手入れしてきた愛用の竹刀を肩に担ぎ、ひなは溜め息をつきながら部室に向かった。

いったい、なんだというのだ。




一年の頃は、もっとこう、少し頭の良いいつもニコニコした、いたって普通の男の子だと思っていた。

友人を通して色んな部活動に顔を出し、パソコンだとか分析だとかの手伝いをフラッとして帰る、出来の良い奴と誰かが言っていた。


何をきっかけに喋り始めたのか…、とりあえず廊下ですれ違えば軽く会話する程度の穏やかな関係だった。


重たい鉄扉を開け、じめじめした部室で、更にじめじめした剣道着に着替えながら、ひなはそんなによろしくない頭でうーんと色々思い出そうとする。





ああそうだ、二年で同じクラスになってからだ--。



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『あ、鈴鹿さん。今日から同じクラスだね。』


『あ~渡辺くんだ、ほんとだね!よろしく!』


『あれ、鈴鹿さんびしょびしょだね?傘忘れたの?』


『そうなんだよ~もー途中で降って来たから。…うっ、…イテテ』


『……やっぱり雨の日は痛む?傷の跡…』



『アハハ、うんちょっとね。……ってあれ?なんで右腕の傷知ってんの?』




『………………え?』