訳の分からぬ事は続くもので。


「やーー、言ってみるものね。」


雑誌の付録に付いているおまけのトートバッグが、何故かやっさんが持つだけでお高いブランド品に見える。

ご機嫌な安野はスマホ片手にフンフンと鼻歌を歌った。

洗練された高級住宅街沿いの道を練り歩き、データで送られてきた場所を探す。

安野の後ろには、減なりした顔のひなと、普段通りの瀬崎君がてくてくと足を進めていた。


…なんでこんな事になっている。

「なぁに?妙なもの食べさせられたフグみたいな顔して。」

くるりと振り向いた安野は可笑しそうにひなの頬を指で突く。

「そんなフグの顔なんか見たことないしっ!ってかなんでこうなった!!」

「まーだ言ってんの?私と渡辺君の利害の一致ゆえに、よ。というか、行きたいって騒いでた子黙らせてあげたでしょー。文句言わなーい。」

利害の一致。

ひなは歩きながら首を傾げた。

安野は一旦前を向き、目線だけで妖艶に振り替える。

「私は塾のお金を浮かせたい。& 美味しいオヤツを食べてみたい。」

「あー、うん。それは分かるわ。」

ひなは安野の事情を思い出し、苦笑いした。

「じゃあ渡辺の“利”って?」

「“ひなを軟禁したい”とかじゃない?」

「お…っっそろしいこと言うなゴラーー。」

顔を真っ青にして立ち止まりかけたひなの手を引き安野はケタケタ笑う。

「冗談だって。ツレナイ彼女を家に呼ぶ口実なんてなんでもいいんでしょ?」

ひなはのどかな街並みを見る振りをしながらまた妙なものを食べさせられたフグのような顔をした。