「ねぇ、どっかで温かいもん飲んでから帰らない?」

はぁぁと両手に白い息を当て、渡邊がチラリとこちらに視線を送りながら尋ねる。

ひなは前を向き、ウーンと腕を組んだ。

部活帰りだから、時間がなぁ…。

「心配しなくても、お母さんに連絡しといてあげるよ?」

「………。」

何故心の声が。いや、それよりも、いつからうちの親とメル友に。

不信感いっぱいの瞳でひなは渡辺を見上げる。

「…あれ?」

突然きょとんとしたひなの声に、渡辺は「なに?」っと首をひねった。

「渡辺、身長伸びた?」

「…それか、ひなが縮んだのかもね。剣道身長縮むっていうし。」

「迷信だしそれ。久米はぐんぐん伸びてるよ。」

「他の男の話しない。」

「出た!ヤンデレモドキ。」

不機嫌に睨んでくる渡辺に、ひなはお手上げとでも言いたげに夜空に向かって両手を平げる。

…渡辺に好きだなんて言われた事、一度もない。

でも、それに通ずる数々の発言、行動、仕草に、ひなも軽く言い返せるぐらいには成長した。

まぁ言い返せるぐらいには成長したところで、

「うるさいな。あ、信号変わりそう。ほら行くよ。」

パシッと捕まれた腕には、

「!」

まだ慣れない。