目を剥くひなとは対照的に渡辺はニッコリと意味深に微笑み返す。

「どこが!」

「え?なんていうか、付き合う前は渡辺ギスギスしながらひなに絡んでたし、ひなはひなで振り回されてた感あったけど、今は何て言うか、落ち着き?みたいなのがあって、収まるとこに収まってるっていうか、うん、安定感すごいよあんたら。隙のないカレカノ感半端ない。」

ありがとう、と余裕で返事をする渡辺にひな眉を潜めた。



あれから一ヶ月。

当初は盛大に騒がれた二人だったが、もう話題性も消えてきた今日この頃。

あの手この手で何度も丸め込まれ、気が付いたら渡辺とは部活後は一緒に帰り、休み時間も何だかんだ一緒にいることが多く、休みの日なども都合が合えば呼び出しに応じていた。

確かに渡辺の、前までのようなわざわざ人の神経を逆撫でするような発言も減り、言動も視線も仕草も刺々しさが少なくなったように思う。

ひなはひなでその分声を荒げる事が減り、二人には穏やかな雰囲気が漂っていた。

「ていうかそもそも付き合ってないし。」

「あんたまだ言うソレ?照れ隠しもそろそろいい加減にしないと流石に渡辺が可哀想になってくるんだけど。」

「は?いやいや可哀想なの私だから!ちょっと待ってコレ?は?何?罠?」

ジトっと責める視線が気が付いたらあらゆる方向から飛んできてひなは焦る。