これって自意識過剰かな?じわじわと思っていた疑問を、攻撃に織り混ぜた結果、結局はぐらかされた気がする。

でも。ただの過ぎたイタズラ、他人を巻き込んだ過激なストレス発散方、それ以外にはこの答えしか思い付かなかったのだ。

クスリと渡辺は笑い、照れ死にしているひなの頭にポンと手を置く。

「そろそろ送りましょうかお嬢様。」

「………。」

ちょっとだけ柔らかくなった微笑みを向けられ、毒気を抜かれた気分でひなは素直に目を伏せ立ち上がった。



薄暗い帰り道、ひなは真横を歩く渡辺を肩で感じる。

手は繋いで来なかった。






「ひな、ここ間違ってる。」

「え、これ?」

ちょうど良い光が差し込む教室で、もうすぐ提出のノートと格闘するひなの前の机に渡辺が座る。

あいかわず紙パックをすすりながら、渡辺はノートに指を滑らせた。

「あ、こっちも。え、もしかしてこの公式使ってるの全部じゃない?どれだけアホなの。」

「うるさいよ。ちなみに正しい公式カモン。」

「タダより高いものはない。」

「よし!ミンティア一粒でど」

「この契約はなかったことで。どんだけケチなの。」

「渡辺限定で。」

「では。」 

「待って!3粒!3粒でどうだ!」

立ち上がりかけた渡辺の腕を慌てて掴むひなに、うむ、と渡辺はまた腰を降ろす。

そんな様子を横の席からぼんやりと友人が見つめていた。

「あんたら安定の夫婦感だねー。」

「はぁ?!」