「な、何笑ってんだバカーっ!あんたのせいであんたのせいで…っ!なんでっ私がこんな…こんな惨めな気持ちに……っ。」

うるっ…と思わず大きな瞳に涙がたまり、ひなはハッと渡辺から顔をそらす。



だって、…振られたのである。



気持ちは受け取れないだとか、
パスだとか、ごめんだとか……。

こいつの偽ラブレターのいたずらで。

好きでもないのに、…いやむしろ好きでは無いからこそ、この何ともモヤモヤした複雑で惨めな気持ちになるのかもしれない。

なんか悔しい。

私もあんた達なんか好きでもなんでもないわよーっ!



しかし、本人達に一切過失はない。告白されたから返事をしたまでである。

そう、悪いのはすべてこの目の前のキツネ顔した鬼悪魔、渡辺透哉のせいなのだ。

懸命に悔し涙を我慢するひなに、微笑んだまま渡辺は諭す。


「鈴鹿?なんか勘違いしてない?」


さも嬉しそうにさっと綺麗な白い手でひなの涙をぬぐいながら、渡辺は優しく首を傾げた。

ひなは目線だけをつられて上に少しあげる。


「俺は別に鈴鹿の名前なんて出してないよ?」

ただ、二年一組H・Sと書いただけさ、とニコニコ楽しそうに笑う渡辺を本気で睨みながらひなは叫んだ。


「このクラスでH・Sは私だけじゃないアホー!!」