島田に呼び出しされていた薄暗い廊下から、鈴鹿(すずか)ひな は早足で日の当たる明るい教室に戻る。
どす黒い怒りのオーラをまとってズンズン廊下を進むひなに、周りは青い顔をしながら道をサッと譲った。
バンッ!!
跳ねんばかりに開かれた教室のドアの音が、ひなの到着を渡辺透哉(わたなべ とうや)につげる。
「あらら、なにやらお怒りですかお嬢様。」
「なにやらじゃないよ!マジふざけんな渡辺!!」
これで、
これで3回目だ。
ひなは長いポニーテールを揺らしながら、涼しい顔して窓際で紙パックのパイナップルジュースなどを飲んでる“人でなし”にギャーギャーと噛みつく。
「もう、本当にいい加減にして!なんで私が毎回毎回告ってもないのに振られなきゃなんないの!?」
渡辺は形の良い、品のある綺麗な唇からチュルンとストローを外し、切れ長の瞳を更に細めてニッコリと微笑んだ。
女子から桜色のため息が出そうな甘い微笑みである。