「ちょーっちょーちょーっと!」
ひなはずいずいずいと渡辺を引っ張り、女の子の群れからちょっと離れた所に移動する。
「…あんた何考えてんの…っ!」
ひなは小声で悲痛に叫ぶ。
「何って?本当の事言っただけだけど?」
「本当って、付き合うなんて一言も言ってないよね!記憶ほじくり返してもないよね!条件の話ちゃんと聞いてた?」
そう耳元で叫ぶと、あぁアレね。と、いかにもめんどくさそうにキツネ男は頷く。
「なんだっけ?イケメンで?優しくて、頭良くて?スポーツ出来て、上に立ってる人間だっけ?」
小馬鹿にしたように確認をとる渡辺にイライラしながら、そうだけど!なんか文句ある?!とひなは自分の腕を力強く組んだ。
すると渡辺は何故かまたずるずるひなを引きずり女子の群れに突っ込んでいく。
また苦手分野に引きずり込まれそうになり、何考えてんだとひなは無駄な抵抗をするが、 渡辺は意外と力が強かった。
「ねぇ、君たち。」
渡辺は少し困った笑顔で、キラキラした瞳の子ウサギ達を見つめる。