「ふーん?で、いたらそいつと付き合う度胸は鈴鹿にあるの?どうなの?」
…なんなのだ、さっきから。
珍しく引かない渡辺の事は気がかりだが、今はそんなに傷(失恋してないけど)をえぐられたくない。
というか、そんなに自分を誰でも付き合っちゃうダメな女に仕立て上げたいのか。
またいつものわけのわからない嫌がらせか?
色々考えたがらちがあかないので、ひなはいい加減折れてやることにした。
「はぁ、度胸度胸ってさっきからなんなの!もー…、はいはい付き合うわよ!思わず付き合っちゃうよ!これで満足?!」
「ふーん?」
「ただし!イケメンで優しくて頭も良くってスポーツも出来て人の上に立ってるようなそんなイイ男がいたらの話だけどね!」
ガハハハハと人の目も気にせず椅子に片足をあげて腰に手をあて「どーだ!そんな男がいるか?!」とでも言うように勝ち誇った目で渡辺を見下げる。
そんなイイ男が先輩以外に居るはずがない。
しかし逆に渡辺は頬杖を外さず、ひなを見上げながら「引っかかったな」とでも言いたげに、ニヤリと整った唇を曲げた。
「これなーーんだ?」
「?」
ひなはこの時人生最大のミスを犯した事に気付いていなかった。