先生にプリントを提出し、自分の席に戻ろうとした。
でも星夜に腕を掴まれて席に戻れない。
「なんねん。」
小声で囁いてみたけど、顔は見ない。
その時、星夜がうちの手の平に、一枚の紙を乗せた。
「そんだけやから・・・。」
あっけなく散る星夜の言葉。
不思議に思いながら席に着く。
一折一折丁寧に折られた紙を、一秒一秒、、、何十秒もかけて開いていく。

‘桜へ
さっきは悪かったわ。
もっと順番ちゅーもんがあったわ。
言いたいことあるから、放課後。
最初桜と会った場所で待っとる。
               星夜’

あまりに短い文章。
でも一文字一文字震えていて、シャーペンの心が折れた跡がいくつもあった。
いつの間にかうちの手も震えが止まらない。
斜め前には星夜がいるのに、何故だか遠くに感じる。

‘ガタタ・・・!’

みんなの立ち上がる音に、現実の世界へと引き戻される。
「礼っ!」
うちも立ち上がる前に、授業終了の号令が教室に響く。
「桜〜」
授業の終わりと共に、教室に響く星華の声。
みんなもざわつき始めた。
「なしたー?」
今はあまり人と触れたくなかったのにな。
例え星華でも。
「どうしたん?」
二時間目の途中から登校してきた星華。
朝の出来事は話していない。
まず誰にも話す気はないけど。
「なんもあらんよ。でも今は1人になりたい。」
うちは星華の返事を待たず廊下に出た。
生温い空気が嫌で窓を開けて
胸から上を外にだした。