うちは、軽く首を傾げてみた。
なんとなくドキドキする気持ちが邪魔をする。
「俺な・・・・ほんまは・・・。」
言葉につまり下を向く星夜。
少しだけ淡い期待をする。
なんとなくこっちまで赤くなってしまって、この時何故か脳裏に‘好き’と言う文字が浮かんだ。
うちは星夜のことが好きなのかも知れない。
少し上を向いて星夜を見ようとした時。
唇に柔らかい感触を覚える。
「えっ・・・・?」
とっさに自分の手で唇を覆う。
いきなりうちの唇に降ってきたのは、星夜の唇。
今のうちは、何をしているのか、頭の中から状況を探るので精一杯。

‘キス・・・・’

言葉には出せない。
急に恥ずかしくなってうちは足に顔をうずめる。
ように、しゃがみ小さくなった。
「ごめっ!!いややったろ!?」
頬を赤らめ星夜は慌てている。
でも正直嫌ではなかった。
ただ恥ずかしかっただけ。
だから顔を合わせられない。
立ちすくむ星夜を前にうちは少しの沈黙の後、教室へと走った。
「まっ!!さく・・・・!」
後ろでうちの名前を呼びとめる星夜には何を言うことも振り返ることも出来ない。
だって今星夜の顔を見たら星夜を信じてしまう気がする。
それがどうしても出来なかったんだ。
ごめんなさい。

         *   *   *

‘カタ・・カタタ・・・’

みんなが一斉にペンを動かす音に少し苛立ちを感じる。
「はい。後ろから紙集めて~。」
大声で叫ぶ先生に、一番後ろのうちは、紙を集めていく。
授業なんてする気はまっぴら無いが、今日は席替えだったから一応出てみた。
うちの席は一番窓側の一番後ろ。
最高な席のはずなのに、斜め前が星夜になっただけあって、あまり気分が乗らない。