外が明るいから、電気がついていないのに、目を細めてしまうほど、眩しさの積もる廊下。
「もう。いや・・や・・・。」
そう呟いてしまったら、スクールバッグがより重く感じる。
‘ずしっ’とした何がか、うちの背中に伸し掛る。
でも形のある物ではない。
どこからどこへ生まれたのか分からない、罪悪感。
誰のどこへ向かってかも分からない。
分からない方がいいのかもしれない。
「・・・・・!・・・・ン!!」
もう見えなくなった本舎から学年棟に向かう本舎スロープから声が聞こえる。
振り返ろうか、一瞬戸惑った。
でも、うちを呼ぶ人なんていない。
昔から1人で生きてきたうちには、星夜と星華以外の声を覚える力なんて、どこにもあるはずもなく。
スタスタと先を急がす肩に、次は形のある物が乗る。
重いスクールバックが食い込む肩の上から、重い手が乗る。
「ちょ・・・!誰ぇ??」
痛みに耐え切れず、後ろを振り向く。
「・・・・ハァ・・・桜・・・チャン・・・。」
この黒と金の髪・・。
零君だ。
零君は、過呼吸にでもなったかの様に、息を切らしている。
両肩を上下に揺らし、うちの肩に乗っている右手以外を下へ向ける。
「ねぇ・・ちょっと。痛いんやけど・・・。」
星夜と居てもつくづく思うが、男の子の力ってすごい。
細い腕の子なんて、折っちゃいそうなくらいだ。
「っあ!ごめんなぁ!あのさ!今日星夜知らん??見当たらんのやわ。」
そういえば、星夜は追いかけてこなかったとしても、やけに遅い。
「朝まで一緒やったけど、知らんわ。」
例え知っていても、零君には教えるつもりはない。
零君は、いつの間にかうちの前を歩いていた。
「ふ~ん、せなこと言うてええんや。つぅか、‘零君’やなくて、‘零’でええよ?零で。」
零。
本当に不思議な男。
そして、どこまでもずるい。
ウザイのに、許せてしまう。
     
        *     *     *

「れ~いっ!」
教室の前まで着き、零に別れを告げようとした時。
背後から聞こえる明るい声で、タイミングを逃す。