「幸音ちゃん? 笑わないで聞いてくれる?」 「う、うん……」 やっぱり傷口を押さえる雪原の手は震えていた。 「俺ね…… 血が恐いんだ……」 …………え? 血が恐い? 「小さい頃からなんだ。……笑っちゃうだろ?男なのに」 雪原は無理に笑ってみせた。 その笑顔は あたしの大好きな笑顔でも 作り笑いでもない。 哀しみを押し殺す、 傷を忘れようとする、 そんな悲しい顔だった。