そして1枚の紙を机に置いて
玄関へ向かう。


「待って!
お願い……行かないで」


そんな父さんを
母さんは必死に連れ戻そうとしていた。


でも――――。



「すまない、笑。
もう俺は…好きじゃない」


父さんは母さんの手を振りほどいて行ってしまった。


そして机の上に置き去りされた紙。


――――離婚届。



それを母さんは、握り締めて
ずっと泣いていた。



「……母さん?」


やっとの思いで動いた足を
母さんの方へ動かす。



俺の声は
母さんには届いてなくて。