ある夜のこと。


早く眠りについた俺は、父さんの声で目を覚ました。


「もう――――…」


声が微かに聞こえる。

俺は、見つからないように
こっそり声のする部屋を覗いてみた。



「なん、で……なんでそんな事言うの?」


母さんは次から次へと涙を溢した。

そんな母さんを見ても
父さんは至って冷静に言葉を紡ぐ。




「もう無理だ。
――――別れよう、笑(エミ)」



笑とは母さんの名前だ。


父さんは冷たくそう言い放つ。