「そうなんだ? てっきり幸も好きなのかと 思ったよ」 「…幸“も”?」 「幸音は幸を好きだよ」 見てたら幸だって分かるだろ? あんなに顔を染めて 幸を見るんだ。 好きの他に何があるんだよ そして…――――。 「幸だって好きじゃなくても 大切だと思ってんだろ?」 「……」 「大切なら手放すなよ。 ……失う前に」 俺がそう言うと 明らかに幸の肩がビクッと震えた。 そして顔を引きつらせたのも 俺には分かった。