「さすが、営業部No.1ね」

「やめろよ、その言い方。とりあえず、話がまとまって良かったよ」


会社を出て数時間、外回りの仕事が全て片付いた。

「このまま、直帰する?」

「あぁ。帰って寝る」

「そう。じゃあ、私も帰ろうかしら?大地のマンションに」

「は!?」

柊が、腕を絡めてきた。

「何よ、その反応。前は、即OKしたじゃない」

「あー…」

「いつもの大地じゃないみたい」

「そんなこと…」

夕暮れの街の真ん中でそんな会話をしていると、視界に見覚えのある人物が入った。

「…」

向こうも、こっちに気付いたのか歩いていた足を止めた。

「大地、聞いてるの!?」

「うぉ…」

さっきよりも、もっと柊が腕に抱きついてきた。

その光景を見たからなのか、足を止めていた人物は背を向け、走って行ってしまった。



「あの子、知り合い?」

視線から柊も気付いたのか、そう尋ねてきた。


「…いや」

「そうよね。大地に、セーラー服着た少女の知り合いがいたら、犯罪だもんね」

「…」


走り去って行ったのは、あの少女だ。
驚いた顔をして、俺から逃げるようにー…


「で、大地のマンション行っていいよね?」


別に、俺は悪いことをしたわけじゃない。


「大地?」


なのに!


「今日は、ダメだ。悪い…俺、先帰るわ」


いけないところを見られてしまった心境になるのは、何でだろうー…