「ユキ、とりあえず帰ろうか…母さん、ちょっと心が不安定みたいだから」


お母さんを罵声を聞き、呆然と立っていると、お父さんがぽんっと頭を叩いた。


「行こう」


ギュッと手を繋ぎ、病室から出た。

手のひらから伝わってくる、お父さんの体温。


「ユキが無事で良かったよ。母さんは、あんなこと言ってたけど…」


「…」

いつもは、温かくて包み込まれるような気持ちになる。

「あ、そうだ!夕飯買って帰ろうか?母さん、ずっと病院だろうし…ユキは何食べたい?」


「…」

けど、今は何かー…



「ユキ?」



何も感じない。


頭がぼーっとして、何も考えられない。
話している声も遠く、透明の箱の中に閉じこめられているような感じがする。