病院に着くと、警察から連絡を受けたお母さんがいた。
「は…るか…遥香!」
大粒の涙を流し、救急車から降ろされたお姉ちゃんの名前を、必死に呼んでいる。
「お母さん、離れてください」
「いやぁぁ」
担架の上でぐったりと動かないお姉ちゃんに、お母さんはずっとしがみついていた。
…あんなお母さんの姿、初めて見た。
私は、ただ呆然とその光景に立ちすくんでいた。
「…遥香」
手術室の扉が閉まると同時に、お母さんは廊下に力なく座り込んでしまった。
「おか…」
「おいっ…遥香は!?」
座り込んでしまったお母さんの元に、行こうとしたとき…
スーツ姿の男の人が、私の横を猛スピードで通り過ぎて行った。
その後ろ姿は、毎日見ている。
「あなた…会社は?」
「それどころじゃないだろ!?遥香は、大丈夫なのか!?」
「わからない…」
「わからないって…事故が起こった時、お前はどこにいたんだ!?一緒にいたんじゃないのか!?」
荒々しくなる口調。
「怒鳴らないでよ!私だって、頭の整理ができてないんだから…」
泣きながら訴える、弱々しい口調。
こんな、お父さんとお母さんー…
生まれて初めて見た。