「数針、縫いましたから。後日、抜糸をしにきてください」
治療は数分で終わった。
ズキズキと傷口が痛むが、それ以上に心臓がドクンドクンと脈を打つ。
早く、帰らなきゃ。
じゃないとー…
「ユキ!あなた、ここで何してるの!?」
ビク!
前から、見覚えのある人物が剣幕の表情で近付いてくる。
ドクン。
ドクン。
さっきよりも脈を打つのが早くなり、息苦しくなる。
「病院には来るなって言ったじゃない!」
ビリビリと頭に響く、怒鳴り声。
「早く帰りなさい!あんたがここにいると思うと、ぞっとするわ!!」
虫けらを見るような目で、私を見る。
「早く、この子を連れて帰って!この疫病神を!」
しょうがないけど…大地くんの前では、言われたくなかったなー…
「…大地くん、帰ろ」
唖然としている大地くんの腕を掴み、その場から逃げるように歩き出した。
数ヶ月ぶりに会った、お母さんとの会話。
…ううん。
会話になんて、なってない。
もしかしたら私なんか、お母さんの子供だとは思われてないのかもしれない。
あの日から、ずっとー…