「…ほらよ」


台所を片づけ終えると、淹れたての紅茶を少女の待つソファまで持って行った。


「あ、ありがとうございます」

自分で処置したのか、傷口には絆創膏が貼られている。

でも、ちょっとー…


「…絆創膏じゃ、ダメだろ」

絆創膏を貼ってあるのに、傷口からポタポタと血が流れ落ちている。


「ガーゼあるか?絆創膏じゃ、役にたたん」


「え…あ、はい」


救急箱からガーゼを取り出す。

「剥がすからな。ちょっと、痛いかも」

絆創膏を慎重に剥がす。

「いっ…」

「我慢だ。我慢…って…」

「っ…?」

「おい…」

絆創膏を剥がすと、傷口が見えた。


「…何で」



さっきよりも傷口が広がってるんだ!?


「病院行くぞ!病院」

「え!?」

「傷口が広がってる」

「え…あ…さっき救急箱を取ろうとしたときに、棚にぶつけたんだった…」

「そういうことは、早く言えよ!出血多量で死ぬぞ!?」


「えぇ!?」


「とにかく、病院に行くぞ!近くに車停めてあるから、今ー…」

慌てて車のキーを持ち、リビングから出て行こうとしたときー…


「大丈夫ですから!!」


背中のシャツの裾を掴まれ、その足を引き止められた。



「大丈夫って…頭はなぁ…」


「病院にだけは、行きたくない!!」


「!」

声を荒げ、そう少女が言った。

…どうしたんだ?

裾を持つ手が、少し震えている?