「おい!どうした!?」
慌てて椅子から立ち上がり、台所に向かう。
「!」
「いた…い」
台所には散乱した調理器具と、床に座り込んでいる少女がいた。
「大丈夫かって…頭から血出てるぞ!?」
「え…」
落ちてきた調理器具で頭を切ったのか、少女の右額から血が流れ落ちている。
「あ…本当だ」
「呑気なこと言ってる場合じゃねぇ!とりあえず、止血が先だ!」
「でも、お茶…あ…片付けも…」
「いいから!とりあえず、このタオルで傷口抑える!」
流し台に掛けてあったタオルを奪うようにとると、少女の傷口にそっと当てた。
「…ごめんなさい」
弱々しい声で、少女が俯きながら言った。
「顔に傷、残らないといいな」
下がった頭をポンっと叩くと、少女は小さく頷いた。
「お茶は、俺が用意するから。お前は、救急箱持ってソファに座ってろ」
「でも…」
「いいから。ほら」
ゆっくりと少女を立ち上がらせると、リビングに行くように促した。
「…すいません」
軽く会釈をすると、少女は救急箱を持ちにリビングに行った。
「…ふぅ」
少女に聞こえないように、小さく溜め息をついた。
「…で、どうするかー…」
散乱した調理器具を眺めながら、溜め息混じりに言った。
他人の家を物色してるみたいで、何か気が引けるけど…しょうがないよな。
そう心の中で思いながら、散乱した調理器具を片づけ始める。