「お前の母さんが作るカレーライスって、こういうのなの?」
「え…」
「家庭によって、料理の味や見た目が違うっていうのは聞くけど…これは…カレーライスか?って、料理自体に疑問を抱くよ」
「…っ」
溜め息を交えながら言うと、少女は俯き黙ってしまった。
あ…やべ…言い過ぎた?
「あ…いや…その…」
泣く?泣く?
「お母さんがこういう料理なら、しょうがな…」
「お母さんが、料理作ってくれたことなんかないもん」
「…え?」
フォローを入れようと思ったが、少女の発言に驚いた。
「小学1年の時が最後で、それから一回も作ってもらってない」
「小1が最後って…」
7年間も、お母さんの手料理を食べてないのか?
一緒に住んでるのに?
「だから、テレビで観た通りにやっただけ」
「あ…あぁ、カレー粉のCMの…」
蜂蜜とリンゴが、どアップで映っていたやつー…
「だから…ごめんなさい」
俯いたままの少女が、もっと頭を下げた。
「う…あ、いや。こっちこそ、ゴメン」
ぽんっと少女の頭を撫で、頭を上げるよう促す。